『岸辺露伴ルーヴルへ行く』は観終わった後も謎の多い作品です。その多くの謎の筆頭が奈々瀬(ななせ)です。すべての謎は奈々瀬に出会ったことからから始まります。
最後に奈々瀬の正体は明らかになりますが、それでも奈々瀬は結局なんだったのか、謎が残ったままです。
しかも、原作漫画と実写映画の違いも多くあります。
そんな奈々瀬の正体と謎、漫画と映画の違いについての考察と感想です。
※ ネタバレしています。ご注意ください。
岸辺露伴ルーヴルへ行く、奈々瀬との出会い
岸辺露伴と奈々瀬の出会いは岸辺露伴17歳の頃。
露伴は夏休み、漫画を書くために元旅館で賃貸アパートにしている おばあちゃんの家に2ヶ月滞在します。夏休み長っ!
そこへ入居してきたのが、奈々瀬です。
こっそり奈々瀬をスケッチしたことがバレて「のぞきしてるの?」と奈々瀬に言われ初めて会話、露伴の作品を見せることになります。
奈々瀬の部屋で露伴の作品を見ているときに、露伴に「この世で最も黒い絵」「最も邪悪な絵」の話をして、「ルーヴルにある」と言います。
話をした後、いきなり露伴に「出て行って」と言い、奈々瀬は泣きながら走り去って行きます。
原作漫画の奈々瀬
奈々瀨の名字は「藤倉」、既婚者だけど離婚する予定で年齢は21歳
初対面の露伴からスケッチブックを奪って、勝手に中を見たあげく、作品を見せてと露伴を部屋に引き入れます。気が強くて物おじしない女性のようですね。
奈々瀬の部屋で、露伴に この世で最も「黒い絵」の話をした後、奈々瀬の携帯に電話が掛かってきて、奈々瀬は泣きながら「いやよ」「別れるなんて…」と電話の相手と会話をしながら、外へ走り去っていきます。
電話の相手が誰だかわからないけど、会話から離婚予定の旦那と思われますね。
実写映画の奈々瀬
奈々瀬を演じているのは木村文乃さん。
漫画よりももっと和風で物静かな雰囲気。漫画のイメージとは違うけど、これはこれで作品には合っています。
きれいだけど21歳ではないよね。でも年齢には触れていないので問題なし。そもそもルーヴルへ行った岸辺露伴も27歳の設定だけど、高橋一生が演じて何も問題なし。
映画ではこの時点で奈々瀬は既婚者という話は出てきません。そして「藤倉」という名字も出てこないので、「奈々瀬」という名前しかわかりません。
奈々瀬の部屋で「黒い絵」の話をした後、突然泣き出して外へ出ていきます。
原作漫画では、電話相手と話しながら近くにいるかもしれない相手を探していなくなりますが、映画では相手はいません。一人で勝手に泣きながらいなくなるので、当然事情はあるのでしょうが漫画よりも精神的にあれな人って感じ。
奈々瀬の謎
奈々瀬はどこかへ行って、1週間くらい経って戻ってきますが、一体どこ行ってた?漫画的には離婚予定の旦那のところでしょうか。
映画での謎は「黒い絵」は露伴のおばあちゃんの家にあり、絵を買い取りに来た謎のフランス人に絵を手渡すのは露伴です。なのに、奈々瀬はその前に「黒い絵」がルーヴルにあると露伴に言いました。
なぜ、これから起こることがわかったのでしょうか。
岸辺露伴ルーヴルへ行く、奈々瀬再び出ていく
何処かへ行っていた奈々瀬が戻ってきて、露伴に合った途端泣きながら抱きついてきます。
どれほどつらい想いを抱えているのか、露伴は奈々瀬に言います。
「あなたの力になりたい」「すべての恐れからそれが何であろうとあなたを守ってあげたい」
少年時代の露伴はなんて純粋なんでしょう。
少年と言っても、このとき露伴は17歳、「ジョジョ」での露伴は20歳だから、3年でなぜあんな自己中のかたまり男になってしまったのか。
露伴は 自分が書いた奈々瀬の絵を見せたところ、なぜか奈々瀬は突然ブチギレます。
「重くてくだらなすぎるわッ!すごくくだらなすぎて安っぽい行為ッ!」
そしてハサミで絵をズタズタにして、また泣き崩れます。
完全に精神があれです!こんな人いたら怖いわ!露伴は声もかけられず唖然としていますね。
漫画の奈々瀬
泣きながら出ていくとき、奈々瀬は露伴にあやまります。
「ごめんなさいほんとうに」「わたしを許して何もかも…」
そして またもや走り去って出ていきます。
ブチギレた後に「許して」と言われてもねえ。
奈々瀬はそのまま二度と戻らず、露伴少年は漫画家としてデビュー。いつしか奈々瀬のことを忘れ 10年の歳月が流れます。
映画の奈々瀬
出ていくときに、露伴に何かを言います。このとき口元だけは動いているけど何を言ったのかはわかりません。
現在の露伴は、奈々瀬が何を言ったのかを忘れていたようですが、後でこの言葉をもう一度聞くことになります。
原作を見た人なら、このとき奈々瀬が言ったことは「私を許して」だろうと思うでしょう。このときの言葉が後のキーワードになります。
奈々瀬の謎
なぜいきなり絵をズタズタにした?これにつきますね。
この時点では、奈々瀬は きれいだけど精神がやばい人という印象しかありません。
ひょっとして、このときのトラウマで露伴は他人を一ミリも顧みない自己中男になってしまったのか?
岸辺露伴ルーヴルへ行く、ルーヴルで奈々瀬と再会
これを再会と行っていいのかどうかですが…
ルーヴル美術館地下の、Z-13倉庫で「黒い絵」に描かれていたのは奈々瀬でした。
そして露伴が「黒い絵」の呪いである先祖に襲われているとき 奈々瀬が現れます。
原作漫画の奈々瀬
黒に白の線で描かれた奈々瀬が「ズルリ」と絵から出てきます。
露伴に襲いかかってくるたくさんの先祖たちの中で泣きながら言います。
「私を許して 何もかも」「こうするしかなかった」
いや 許せないでしょうこの状況は!しかも助けてくれないのかよ!
漫画では、ここで露伴は唐突にヘブンズ・ドアーを自分に使うことを思いつきます。
「切る」ッ!「自分を切らねばッ!、自分の記憶をッ!」
自分で「自分の記憶を全て消す」と書き込み、先祖たちを消し去ります。
Z-13倉庫を出て絶対絶命のピンチから脱出、手に書いてある「顔の文字をこすれ」の文字を見て、顔をこすって文字を消し、記憶を取り戻します。
こするだけで文字が消えるんだ…。
実写映画の奈々瀬
露伴に襲いかかってくるのは 先祖たちではなくて、山村仁左右衛門一人だけ。
露伴が絶体絶命のところで、奈々瀬が山村仁左右衛門を後から抱きついて抑えます。
映画の奈々瀬はすごい!身体をはって露伴を助けてる、活躍してるね奈々瀬!
そして、以前 奈々瀬がいなくなる前に言った言葉「全部忘れて」と言います。
この言葉によって、自分の記憶を全部消すことを思いつきヘブンズ・ドアーでピンチから逃れます。
奈々瀬の謎
絵はルーヴルにあるのに、なぜ奈々瀬は日本のど田舎の露伴のおばあちゃんの家にいたのか?
奈々瀬は絵の中の呪いとして囚われているのならルーブルにずっといるはずなのでは?
岸辺露伴ルーヴルへ行く、奈々瀬の正体
露伴は日本に無事に戻ってから、画家「山村仁左右衛門」のことを調べます。
そして、奈々瀬が山村仁左右衛門の妻だったこと、奈々瀬の旧姓が「岸辺」で自分の先祖だった事を知ります。
原作漫画の奈々瀬
日本で昔のことを調べたという露伴の解説のみで語られます。
何で調べたのかはわからないけど、そんなにいろんなことがわかるのか。ページの都合があるのでしょうが、なんか物足りないですね。
実写映画の奈々瀬
日本に戻った露伴は、朽ちた山村仁左右衛門のお墓へ行き、そこへ奈々瀬が現れます。
少年時代の露伴が 奈々瀬にできなかったヘブンズ・ドアーで、奈々瀬の過去の出来事をすべて知ります。
映画では、山村仁左右衛門も高橋一生が演じているのでわかりやすいけど、ルーヴルのZ-13倉庫で露伴を襲ったのも山村仁左右衛門だし…、それなら 山村仁左右衛門が露伴の先祖だったということにならないか?
奈々瀬の正体と謎の考察・感想
原作は120ページほどの短編のせいで説明しきれなかったのか、いろいろと謎が謎のままの部分もあります。基本的に原作漫画は「読者の判断に任せます」スタイルでしょうか。
その辺りを、映画では分かりやすくしてくれたという印象です。
奈々瀬はどこへ消えたのかを考察
まず、最初の謎、おばあちゃんの家に来た奈々瀨はどこへ消えた?
原作では 絵はすでにルーヴル美術館にあります。奈々瀨へ掛かってきた電話は おそらく山村仁左衛門でしょうが、奈々瀬は日本とフランスを行き来しているのか?
ルーヴルの絵の中へ帰っていたのか。しかしルーヴル美術館からなぜ日本のど田舎に現れたのか?
幽霊だから距離や場所は関係ないとしても、なぜ露伴の元へ?
奈々瀬は夫の呪いを封じたかった、それができそうな自分の血縁者のところへ現れた。ということであれば、露伴以前にも何度も現れて、何人も「黒い絵」に呪い殺されている可能性があります。
奈々瀨の「私を許して」は、露伴も同じ目にあわせてしまう、という意味があったのかもしれません。
映画では、奈々瀨が来たとき 黒い絵はおばあちゃんの家にあったので、奈々瀬がおばあちゃんの家に表れるはわかるし、謎のフランス人が絵を買い取って行ったので 絵と共に去るしかなかった、と想像できます。このあたりは映画の方が分かりやすいですね。
奈々瀬が絵をズタズタにした訳を考察
奈々瀨が、露伴の書いた絵をズタズタにしたのは、黒に取り付かれて奈々瀨を描いた山村仁左衛門のように、露伴もまた取り付かれることを危惧したのではないかと思われます。
絵をズタズタにしたことで、露伴の奈々瀬への気持ちを切り離し露伴を開放したのでしょう。
原作でも、露伴は奈々瀬が絵を切り裂いたことを語っています。
もし彼女が絵を切り裂いていなかったら
・・・彼女への思い出で心が折れてしまって、きっと初恋の「慕情」を捨てられず、彼女に触れてしまっていただろう。
奈々瀬が露伴を開放したので、そのまま奈々瀬のことを忘れていれば何も問題はありませんでした。
結局「黒い絵」思い出す露伴
原作では、アホの億泰に「モナ・リザ」に似ていると言われて、「この世で最も美しい絵はモナ・リザ」と言った奈々瀬の「黒い絵」の話を思い出します。
そして「そういえば ルーヴル美術館にあるって言ってたなぁ、ルーヴル行こ!」となります。
しかも、大っ嫌いな仗助(と思われる後ろ姿)とお茶してる!27歳になり露伴もいくらかは丸くなったのか?
それにしてもこの3人まだ学生服着てる!こいつらまだ卒業してないのか?
映画では、古物商のところで、「黒い絵」のオークションのことを知ります。「黒い絵」の元になった絵がルーブル美術館にあることを知って、奈々瀬の話と重なり「ルーヴル行こ!」となります。
古物商にヘブンズ・ドアーする高橋一生・露伴、これは表紙のあれでしょうか。
モブキャラ相手に このカッコいい場面を使っちゃうんだ。でも他で使う場面出てこないからしょうがないか。
そして、露伴はルーヴルへ行ってしまうんですね。せっかく奈々瀬が露伴の気持ちを断ち切って開放しようとしたのにねっ!
奈々瀬の正体を考察
「呪われた幽霊」でしょうか。
映画ではヘブンズ・ドアーで幽霊の奈々瀨の記憶を読んでいます。
原作では襲ってくる先祖を本にしても「死」と書かれていてヘブンズ・ドアーは効きません。
映画では山村仁左右衛門には発動すらしません。
ただ「ジョジョ」で、幽霊の杉本鈴美にヘブンズ・ドアーを使えたので、幽霊にも使えることはわかっています。
とすると、心のある幽霊には使えるけど心がないものには使えない。Z-13倉庫に現れた先祖は、幽霊ではなく幻覚のようなもの。
ほんとうの幽霊なら、おばあちゃんやおじいちゃんが露伴を襲うはずがないはありませんからね。
絵の正体については原作の説明がわかりやすいです。
単に山村仁左右衛門の呪いというだけではなく、攻撃していたのは、顔料と思われていた得体のしれない黒い生物だったわけです。
その生物で山村仁左右衛門が奈々瀬を描き、その妖しい美しさに惹かれた多くの人が殺されたのでしょう。
そんなものに囚われてしまった奈々瀬が気の毒です。精神的に情緒不安定な人になってしまうのも当然ですね。
血縁者である露伴が死から逃れたことで、奈々瀬は「邪悪な黒い絵」から開放されたようです。
最後まで謎のまま
原作のみに出てくる、藤倉奈々瀬の「藤倉」って?旧姓は「岸辺」で結婚後は「山村」、「藤倉」は単なる偽名?
奈々瀬がおばあちゃんの家に来た日、少ないけど奈々瀬の荷物がありました。この荷物は奈々瀬がいなくなった後どうしたのでしょう?荷物も幻覚だったのか?
露伴が絵の呪いである先祖に襲われているとき、顔に書いた文字は「黒い絵」の顔料を指に付けたもの。爪でガリッてやっただけで文字が書けるほど付くのか?2~3文字書いたらカスレないか?
謎のままでも別に問題はないことばかりなんですけどね。