ブライトンの奇跡とは?映画化もされた「世紀の番狂わせ」はなぜ起きたのか!

ブライトンの奇跡とは?映画化もされた「世紀の番狂わせ」はなぜ起きたのか! ラグビー
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第8回ラグビーワールドカップで、日本が優勝候補の南アフリカに勝利して、最大の「ジャイアントキリング(番狂わせ)」として世界中を驚かせました。

20年以上かけても1勝しかできない弱小チームの日本が、ワールドカップで2度の優勝経験を持つ強豪国の南アフリカに勝つ!という誰も想像していないことが起こったのです。

これは「ブライトンの奇跡」と呼ばれ、称賛され、映画化もされました。

なぜこのような「世紀の番狂わせ」が起きたのか、なぜ「奇跡」とまで呼ばれるのか。

ジャイアントキリングが起こりにくいラグビーで、「奇跡」を起こした背景や理由についてまとめました。

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ブライトンの奇跡の背景

世界ランキングは、当時 南アフリカが 3位、日本は 13位です。

それまでのW杯通算成績は、南アフリカが 25勝4敗で、日本は1勝2分け21敗。

イギリスの大手ブックメーカーは、南アフリカ 1対 日本34。南アフリカに賭けても、賭けた分の金額しか戻らないので賭けも成立しません。

そんな強豪国の南アフリカと日本が、第8回ワールドカップ、予選プール初戦で対決しました。

試合会場は、イングランドの“ブライトン”にある「アメックス・スタジアム」です。

ブライトンの奇跡が起きたW杯

2015年、第8回ワールドカップ イングランド大会

ヘッドコーチ:エディー・ジョーンズ
キャプテン:リーチマイケル

34ー32 対 南アフリカ戦
● 10ー45 対 スコットランド戦
◯ 26ー5   対 サモア戦
◯ 28ー18 対 アメリカ戦

ジャパンは初戦で南アフリカに逆転勝ち、2回戦でスコットランドに負けましたが、つづくサモアとアメリカに勝利し、プール戦3勝1敗。

勝ち点で南アフリカとスコットランドを下回り、8強入りは逃しましたが、過去にない快進撃をみせました。

この大会での優勝国は ニュージーランド、準優勝は オーストラリアです。

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ブライトンの奇跡を起こした試合

日本は予想に反して、南アフリカ相手に善戦し世界中のラグビーファンを熱狂させます。

後半40分、29ー32で迎えた終了間際、ドライビングモールからのグランディングが認められずに、5mスクラムとなります。そのスクラムで南アフリカが反則。

ジャパンの選択としては「ペナルティキック」で3点を獲得して引き分けを狙うか、「スクラム」からのトライで5点を獲得して勝利を狙うかのどちらかです。

エディー・ジョーンズHCは「ペナルティキック」を指示します。引き分けであっても十分に評価される試合です。誰がヘッドコーチでも同じ指示を送るでしょう。

しかし ピッチの中では、キャプテンのリーチマイケル選手がコーチの役割を担い 決定権を持ちます。

リーチマイケル選手はメンバーと相談した上で、善戦した「引き分け」ではなく、勝つための「スクラム」を選択しました。

このときエディー・ジョーンズHCは怒って、無線マイクを投げつけて壊したそうです。

スクラムから、右に展開してボールを持ったリーチマイケル選手が潰されたあと、CTBの立川理道選手が左側の2人の選手を飛ばしてアマナキ・レレイ・マフィ選手にパスを出し、マフィ選手からパスを受けたカーン・ヘスケス選手がトライを決めます。

何度観ても感動する「Brightonの奇跡日本 VS 南アフリカ2015」

このときスタジアムの警備員やボランティア、記者も総立ちになり歓喜しました。

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奇跡と言われる理由

ラグビーは、他のスポーツに比べて ジャイアントキリング(番狂わせ)が起こりにくいと言われています。

弱いチームが ジャイアント(巨人)を倒すことが、ほぼないことには理由があります。

フィジカルの強いチームが有利

ラグビーはコンタクトスポーツで、「走る」「投げる」「蹴る」だけではなく、「タックル」「スクラム」「モール」のように 相手選手と接触する場面が多く「走る格闘技」と表現されることもあるくらいです。

格闘技の場合は体格で階級が分かれますが、ラグビーは当然ながら「格闘」ではないので体格での階級はなく、全員が同じ条件で戦います。

体の小さな選手が デカい選手にタックルされると簡単に倒されるし、逆に小さな選手がタックルしても弾き飛ばされたり、集団での押し合いも重量がある方が有利です。

得点が入りやすい

ゴールの範囲はピッチの端から端まであるので、サッカーのように自ら「ゴールを外す」ことはありません。

ボールをしっかりと抱えて走るので、ミスやアクシデントが起こることも少ないです。

トライされないように、選手全員で自陣を守りを固めても、離れたところからキックでゴールを奪うこともできます。

つまり、体の小さな選手は、大きくてフィジカルの強い選手にボールを奪われやすいし、ボールを奪われるとそのまま得点されやすいということです。

当然、海外選手よりも体格が小さい日本人選手は、それだけで不利になります。

強いチームが順当に勝つので ランキングの差がそのまま結果に反映されるし、試合ではランキング以上に実力差があらわれます。

第3回大会では、日本は ニュージーランドと対戦して、145失点という 不名誉なW杯最多失点記録を残したほどです。

なぜブライトンの奇跡が起きたのか

世界ランキング上位のチームに、10位以下のチームが勝つという前例はなく、日本の勝利は誰も想像できないことでした。

そんな想像できないことが なぜできたのでしょうか。「ブライトンの奇跡」が起きたことには理由があります。

用意周到な「ビート・ザ・ボクス」

エディー・ジョーンズHCは、南アフリカ戦が決まってから「Beat the Boks(ビート・ザ・ボクス)=南アフリカを倒す」を掲げて、南アフリカ戦用のトレーニングを開始しました。

「ボクス」とは、南アフリカの愛称「スプリングボクス」のことです。

エディーHCはインタビューで「ジャパンはW杯で勝利が少なく、一番小さいチーム。みんな普通は槍を持って戦うだろうが、自分たちは他の武器で戦う」と答えています。

他の武器とは、体が小さいからこその俊敏な動き、高速で乱れのないパス、二人がかりでのタックル、正確なキック、体格差を覆す低いスクラム、計算されつくしたサインプレーなどです。

南アフリカに勝つために、徹底的に計算し尽くした準備を、完璧に整えていたのです。

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地獄の合宿で意識を変える

エデイーHCは、これまでにない 通算173日の長期合宿を行いました。

日本代表のチームをつくる際、単に海外の強いチームを模倣するのではなく、日本人特有の個性、ユニークさを生かしたいと思いました。そこで考えついたのが、機敏で“賢く動く”ことを身に付けるというもの。そのために、通常1日2回とされる練習セットを3回にしました。当時の日本代表チームが世界のレベルに近づくためには、それが必要だったのです。

この合宿で、スタミナの強化のため、早朝から夜まで過酷なハードワークを選手たちに課していきます。

選手たちは、あまりのトレーニングの厳しさから「地獄の合宿」と言っていたそうです。

世界中の誰もが「南アフリカに勝てるわけがない」と思っていましたが、それは選手も同じです。

「勝てる」「変われる」とどんなに言っても、思い込みを意識的な言葉で変えることは 脳科学的に不可能だと言います。

意識の決めつけを変えるのは 身体や無意識からのアプローチが必要で、ひたすら厳しいトレーニングを繰り返して、身体に「勝てる」ということを覚えさせることが有効だそうです。

指揮官が行った行ったトレーニングは、まさしく的を得ていました。

「俺たちが南アフリカに勝てるわけがない」というネガティブな思い込みに対して、用意周到な準備と緻密な戦略によって、奇跡を必然に変えることができるということを、エディーは選手たちに教えました。

引用元:PRESIDENT Online

選手の成長が指揮官の想像を超えた

選手は最初、「ビート・ザ・ボクス」と言われても「南アフリカを倒すくらいの気持ちでやれ!ということなのかな」くらいに思っていたそうです。

実際、試合の途中まで「本当に南アフリカを倒せるとは思っていなかった」という選手もいました。

試合が進むにつれて、自分達のアタックやディフェンスが南アフリカに通用している手ごたえを実感し、南アフリカが少しずつ焦ってきていることを感じたと言います。

29-32の3点差で迎えた最後の場面、ペナルティキックの指示を無視したキャプテンのリーチマイケル選手の選択を、エディー・ジョーンズHCは想像していなかったでしょう。

スクラムから、ボールを持ったリーチマイケル選手が潰されたあと、CTBの立川理道選手が2人の選手を飛ばして アマナキ・レレイ・マフィ選手にパスを出しましたが、エディーHCは、南アフリカ戦で「飛ばしパスは禁止」していたそうです。南アフリカの選手はインターセプトが上手く、パスをカットされる可能性があるからです。

指示を無視したことに、最初は怒りまくっていた指揮官も、試合後は選手たちを褒め称えています。

「今日の選手たちは勇敢なんてもんじゃない。最後まで相手に向かって行った。引き分けを選ばずに最後のPGで蹴らないことを選択したリーチの勇気をたたえたい」

南アフリカに勝つチームをつくりあげたのはエディー・ジョーンズHCですが、最後の最後で勝利の選択をしたのは、指揮官の想像を超えた選手たちの成長でした。

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「ブライトンの奇跡」は必然

実際には「奇跡」などではなく、完璧な準備と過酷なトレーニング、選手の意識の変化による、必然的な結果だったというのがわかります。

日本の準備は、ほぼ完璧だった。『ジャパンウェイ』(エディーHCが掲げた日本の戦い方のテーマ)の徹底から戦術の落とし込み、レフリーの癖、各選手が向かい合う選手の特徴の確認。エディーHCは、宿舎ホテルからスタジアムまでの時間を知るため、チームバスの運転手に対し、何度も練習させていた。なんと言っても、選手たちの顔つきが違った。

引用元:Sportiva

世界が絶賛する理由

日本チームは「ぶつかり合いを制する者が勝負を制する、ぶつかり合いに勝つのは体格とフィジカルの強さ」というこれまでのラグビーの概念を覆しました。

フィジカルを徹底的に鍛え上げた選手同士が激しくぶつかり合えば、深刻なケガのリスクが高まります。

海外メディアは「日本代表は競技者のリスクを高める体格至上主義を覆す“ラグビー界の救世主”」と報じて称賛しました。

日本はこの試合で、これまでのラグビーとは別の道があるということを示したのです。

世界中が、日本の勝利を称賛して、「ブライトンミラクル」というタイトルで映画化もされました。

演じている俳優たちが、なんとなく似ているようで、やっぱり似ていないのが なんとも微妙ではありますが、結果がわかっているのに何度観ても感動できる!

『日本V南アフリカ – フルマッチハイライト』

ほんともう結果わかってるんですけどね、それでも何度も観たくなるトライの場面。そして見るたびに胸が熱くなりますね。ついつい繰り返し観てしまう中毒動画。

 

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