ラグビーの見どころのひとつにスクラムがあります。強靭な選手の力比べといえる迫力あるスクラムですが、このラグビーのスクラムが謎だという意見もあります。
「なぜ唐突にスクラム?」
「スクラムが意味不明」
「何やってんの?」
「スクラムの意味は?」
何やってんのかっていうと ボールの奪い合いなのですが…
でも ボールの奪い合いで なぜスクラムするのかわからないし、ボールはスクラムの下で足元コロコロして味方の後へ行くだけだし、肩を組んで押し合うのも謎。
そんな、ラグビー特有のスクラムの起源や由来、スクラムのルールについてまとめました。
なぜスクラムなのか
スクラムは、軽い反則で試合が中断した後の試合再開に行われます。
試合再開なら、キックやパスから始める方がスピーディーだしわかりやすいのに、「なぜわざわざスクラムを組むのか」ですね。
スクラムは、ラグビーの起源から、元は足のスネの蹴り合いだったようです。
ラグビーの起源
ラグビーの起源は、中世のイングランドで行われていた「フットボール」と呼ばれるものです。村と村対抗でボールの取り合いをする祭りのようなもので、大人数で手と足を使って奪い合う原始的なものだったそうです。
19世紀に入り、イギリスのパブリック・スクールで、それぞれ独自のルールで「フットボール」が行われました。
「1823年、有名なパブリックスクールのひとつである ラグビー校でのフットボールの試合中、ウィリアム・ウェッブ・エリスという少年が、ボールを抱えたまま相手のゴール目指して走り出した」ことが、フットボールから「ラグビー」への始まりだとされています。
この頃はまだ「サッカー」はなく、手を使うことは許されていましたが、ボールを持って走ったことがルール違反だったそうです。
サッカーとラグビーに分かれた原因
1863年、それぞれ独自に行われていた「フットボール」を統一して、「キックを中心」とするルールが作成されました。
しかし一部のクラブが、「ボールを持って走る」ことを主張して、フットボール協会を離脱します。
ここで「フットボール」は、キッキングゲームの「サッカー」と、ランニングゲームの「ラグビー」に分裂することになります。
当時のフットボールでは、ボールを奪い合う際、つま先に鉄のびょうが入った靴を履いて、相手の足のスネを蹴り合う「ハッキング」と呼ばれるルールがあり、痛みに耐えて平然としていることが男らしいとされていました。
さらにはこれが、どんどん行き過ぎて、ボールを取り合うことではなく、スネを蹴り合うことが目的となるほどだったそうです。
荒々しいどころか、拷問か なんかの罰のようで怖すぎですが、ラグビー側は この「ハッキング」が禁止されたことにも合意できないとしたのです。
スネの蹴り合いからスクラムへ
男らしいとされた「スネの蹴り合い」ですが、後に「やっぱり野蛮だよね」ってことになります。
後にならなくても野蛮なことに気づいていいと思うけど、きっと野蛮が男らしいとされていた時代だっだのでしょう。スネの傷を自慢したい男も多かったのだろうと思われますね。
そこで、男らしいけど野蛮ではない、新しいボールの奪い合いとして「スクラム」が考案されました。
とはいえ、当初のスクラムは現在と違ってやはり荒っぽく、離れた位置から突進して激突し、相手を倒したりする危険なものでした。
ルールを決めた乱闘のように思いますが、スネの蹴り合いをしていた男たちですから、いきなり安全第一!とはいかないですよね。
徐々にルールが改正されて危険な行為は禁止となり、男らしさである力勝負を残しながらも、安全に行うため 審判の掛け声に合わせて組み合う現在のスクラムになりました。
いわば、ルールを決めた安全なぶつかり合い(力くらべ)ですね。目的はあくまでもボールの奪い合いなのですが。
スクラムのルール
スクラムは、ノックオン(ボールを前に落とす)、スローフォワード(前にボールを投げる)など、ミスから起こる軽度な反則や、モール、ラックの密集状態からボールが出ないときなど、レフリーが一旦試合を止めた後のリスタートとして行われます。
スクラムの組み方
スクラムは、基本的に1番から8番までのフォワードの選手が組みます。
フロントロー(最前列)3人:2番フッカー(HO)が中心で、両サイドに1番・3番プロップ(PR)が、お互いのジャージをしっかりとつかんで組みます。
セカンドロー(第二列)2人:4番・5番ロック(LO)
バックロー/サードロー(第三列)3人:6番・7番フランカー(FL)、当初フランカーの位置は三列目でしたが、現在ではセカンドローのロックの両端に組むので、ロックとフランカー4人が横並びとなり、位置的には二列目で 呼び方は当初のまま三列目となっています。
8番ナンバーエイト(No.8)が最後尾に位置します。
押し合わないスクラムもあり
1番から8番までのフォワードがスクラムを行うのは決まりではなく、どのポジションの選手がスクラムに入っても問題はありません。
ただ、フロントローの選手がケガや退場で、代わりができるフォワードの選手がいなくなった場合、ノーコンテストスクラム(アンコンテストスクラム)という、立ったままで押し合わないスクラムをします。
フロントローの選手は、前方から相手選手8人分900kg前後の体重で押され、後からは味方選手から押され、肩と腰にかかる負担は相当なものです。
ひ弱な一般人なら一瞬で潰されて大ケガを負うでしょう。
鍛え上げた選手であっても、フロントローを務めることができるのは、適切な訓練を積んだ強靭な選手だけです。
スクラムを組むことが危険だと判断をされた場合、審判の判断でノーコンテンストスクラムとなります。
他にも、体ができあがっていない中学生以下や、体格差が大きい高校生の試合などでもノーコンテストスクラムとなります。
スクラムの掛け声
スクラムを開始するときは、審判の「クラウチ、バインド、セット」という掛け声で行います。
審判は両チームを確認して、「Crouch(クラウチ)」と声を掛けると 選手は腰を落としてスクラムを組む姿勢を取ります。
次に「Bind(バインド)」の掛け声で、フロントローは相手選手の肩に頭を合わせ、両サイドのプロップ(PR)は相手選手のジャージを掴みます。
最後に「Set(セット)」の掛け声で、力を入れてスクラムを開始します。
「クラウチ」の前のセットアップの段階でしっかりと体勢を整えた上で、「クラウチ」で姿勢を作り、「バインド」で有利となる頭の位置や 相手のジャージをひいてコントロールするなど、様々な駆け引きが行われます。
スクラムって必要なのか
無ければ、無くても問題はないですよね。キックやパスで簡単にリスタートできます。
でも、このスクラムがラグビーの大切な見どころのひとつです。
スクラムは故意に潰したり回したりすると反則になります。スクラムに押し負けると、故意ではなくても 耐えきれなくて潰れたり、回ってしまったりして反則を取られてしまいます。
フォワードの選手はスクラム後に次のプレーに入りますが、押し込んでから走り出すのと、押し込まれてから走り出すのでは、体にかかる負担やスビードが違うといいます。
相手ゴールの近くだと、スクラムで前に出て、スクラムトライを奪うこともできます。
なにより、スクラムに勝つとチームに勢いがつくし、余裕もできて、相手チームにプレッシャーを与えることになります。
スクラムの勝敗は、プレーの勢いを左右して、試合の流れにも大きな影響を与えるものです。
なぜスクラム?ラグビースクラムのルール、起源まとめ
ラグビー独特のルールで、ラグビーを見慣れない人には 意味不明なことをしていると思われてしまうスクラム。
元々は「激しい足の蹴り合いでのボールの奪い合い」から始まり、「野蛮ではない方法としての ぶつかり合い」と若干穏やかになり、さらにもっと安全に行うために何度も変更して「審判の掛け声で始める押し合い」へと変化して現在のスクラムとなりました。
安全と言っても、最前列の選手の体への負担は大きく、なぜわざわざそんなことするのか、と思う人もいるでしょう。
安全性を高めながらも、本来の力比べを行うスクラムは、迫力があるし、ラグビーの試合を面白くするし、そしてかっこいい!
フォワードの選手は、試合に勝ってもスクラムで負けると悔しくて喜べないというほど、スクラムに強いこだわりを持っています。
スクラムに注目するのもラグビーの面白さのひとつですね。
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